ヴィドラがグラスをゆるく傾けたその隣で、ラキーザとファビルはそろってジョッキをあおる。
まるで息があっている二人の仕草に、ヴィドラは目を細めた。
「お二人は、付き合いが長いんだったね」
ヴィドラのその言葉に、ファビルは難しい顔をした。
すかさず、ラキーザが答える。
「そうねぇ。子供の頃のお気に入りのおもちゃがなんだったのか知ってるぐらいは、付き合い長いわね」
「おい、ラキ」
「いいじゃない。へるもんじゃないし」
二人の男女の温度差。その境界線すら微笑ましい……ヴィドラは密かにそんなことを思い、口の端を持ち上げる。
「クレメン君のプライベートは謎に包まれているからね……? 興味深い」
その言い草にファビルの仏頂面は、余計に険しくなる。横目でちらりとヴィドラを覗き見して。
「謎が多いのはお前の方だろう」
指の代わりにジョッキを傾けてくるファビル。ヴィドラはわざとらしく驚いた顔をした。
「私は別に隠しているつもりはない。詮索されないだけだよ」
「ヴィドラの詮索したい奴が、どこにいるのよ。何見ちゃうか怖すぎ」
ラキーザは明るく笑うと、ヴィドラは肩をすくめた。
「じゃあクレメン君の詮索をしたら、どうなるのかな?」
「えー?」
ジョッキに口をつけて、ごくりと一口飲んだラキーザは、ちらりと腐れ縁である男の顔を覗き見ると。
「……好みのタイプの女が、実は可憐系っていう意外性がわかっちゃうぐらい?」
「ラキ! お前は……ヴィドラ! 黙って肩を振るわせるな!」
「やったわねファビル。ヴィドラのこと笑かしたわよ?」
だからなんなんだ!というファビルの叫びが、酒場に木霊した。
腐れ縁の二人
冥界