あの世四界

冥界

第五話 青く黒い本

寄贈された本の整理整頓が終わった翌日。 開館されたばかりの中立図書館には、すでに多くの利用者がやってきていた。 リベルやトワユのような司書たちが、本の案内などをする傍らに、館内案内役の職員も忙しそうに走り回り、事務担当の職員は書類と睨めっこ...
冥界

第四話 泥棒

冥界の気候は、基本的にほぼ一定を保つのが特徴である。 今日も今日とて、穏やかな灰色と赤色に染まる空の下——地に這っていた霊素が上り明るくなると、冥界の住民たちはその日の生活を始める。 悪魔領の街の一角。様々な食糧品を売っている店先に、カロメ...
冥界

第三話 寄贈

カロメティオが帰った後、トワユは特別書庫へと向かった。 一般公開はほとんどされていない書庫の入り口に、警備員が真面目な顔をして立っている。 見知った顔が近づいてくるのを見て、警備員が会釈。形式的に入室許可証を見せるトワユ。 警備員に許可証を...
冥界

猫草ジャック

ある日のことである。 ニノレムが暮らす毒蟲の森に、ジャックが立ち寄った。毒蟲だらけのその空間も、植物を操る彼にとっては居心地が良い。 鼻歌まじりに、迷うことなくニノレムの家を目指すジャック。 やがてたどり着くと、いつものように木の扉を開いて...
腐りゆく書に、願いを

第二話 異界研究

「異界から、冥界への侵略行為が行なわれかけたことが何回かあるのは、知っているだろう?」 トワユは首肯する。「知ってる。大昔からあったけど、そのたびに冥界は難を逃れてるとか。熱心な異界信仰者がやらかすことも、あるんでしょ?」「そう。元々は反メ...
冥界

今日のルヴィア様

それは昼下がりのカフェでのこと。「……で?」 神妙な顔をして、テラス席にいるのはベルヴァである。その目の前にはセマルドの姿が。 そんな表情の美女に真剣に迫られる男は、やや緊張気味の面持ちだった。「……今日の、ルヴィア様は?」 ベルヴァの顔は...
腐りゆく書に、願いを

第一話 冥界史

――我々がいるこの世の名を、『冥界』という。 冥界は生きており、常に循環を繰り返している、というのは現・冥界女王メレヴィア・オラム・シエオルの御言葉であるが、だとすれば、この冥界という生き物の体内は途方もなく広い。 端から端までを目で見たと...